先生の働き方を考えるフォーラムのまとめ

8月23日に名古屋で行われた、第1回ワークライフバランスフォーラムin名古屋〜先生の働き方を考える〜に参加して来た。学校の働き方改革について最新の事例を報告します!

第1部 工藤勇一さんの基調講演

麹町中校長の工藤勇一さんは現在58歳。教育委員会歴10年。その後校長になる。麹町中学校は東京都千代田区にある公立の中学校であり、古くは東大に進学する生徒を多く排出する進学校だった。ここに校長として就任して5年間で行ってきた様々な取り組みについて話をしてくださった。

麹町中学校は既存の学校教育と考え方も取り組みも全く違う。

①固定担任制の廃止

まず固定担任制を廃止し1学年8人でチームで運営しているらしい。そのため、教員一人にかかるプレッシャーが少なくなり肩の力が抜けるという。さらに保護者対応が上手な教員を保護者対応担当にできたり、将来的には時差通勤が可能になるなど、ワークシェアでもメリットがかなり多いらしい。

 

②定期考査、宿題の廃止

定期考査、日頃の宿題などがない。勉強とは本来、できないことをできるようにするためだが、やったかどうかをチェックするだけになってしまっていることから廃止したそうだ。その代わり単元ごとのテストが細かくあるため、テストの回数はむしろ増えている。しかしここが面白いところで、希望者は追試を受けることができ、そこで点数が上がればそれが成績になるという。これなら頑張りたくもなる。

 

③生徒の主体的な活動

教員の力を使わずに運営するスタイルを好み、生徒自身に考えさせたりプレゼンをさせたりする機会を多く与える。例えば、生徒会のアイデアで私服で登校していい期間を2週間設けたり、運動が苦手な子も団結が苦手な子もみんなが楽しめる体育祭を企画・運営させたりもしている。

こうした革新的なアイデアに一貫していることは手段を目的化しないという視点である。活動は目標を達成する手段であるべきなのだ。

 

ではどのように改革していったのだろうか?

まず目的がわからなくなった教育活動を含め、学校運営上のあらゆる課題をとにかく見える化していったそうだ。麹町中学校では、教職員に学校の不満を全部出してもらい、全て表に記録していった。4ヶ月で200の課題が上がり、3年で600項目に達したという。それを一つずつ確実に潰していく。そのおかげで今は職員会議は月1回15分しかないし、改善にはつながらない学校評価の保護者アンケート数は保護者が考えた14の項目のみになった。

こうした改革を進めるためにはとにかく合意形成が大事だという。

そのために目指す姿ややり方などを職員同士でとにかく話し合う。人はそれぞれ意見や考えが違うのは当たり前。だから対話をする。そして解決方法を考え、問題にアプローチする。目標が設定できたら実際の方策を練る。

具体的な目標が決まればあとは自然に転がり始める。

麹町中では、教員はファシリテーターの役割に徹しようということになった。問題を解決するために生徒と一緒になってよりよい案を練るというイメージだ。こうしたやり方は教師側の負担も減らせるし、生徒も楽しいのでまさにWin-Winである。

学校教育を変える場合はカリキュラム学び方の2つをしっかり抑えるただカリキュラムをこなすだけから脱却し、カリキュラムに沿って教え方を柔軟に変えるのだ。その際必要であればプロを呼んで専門的な技術を教えてもらうようにすることも検討する。

えば修学旅行。

JTBの方に学校に来てもらい「旅行ってこんなに素敵なんだよ」とプレゼンをしてもらう。その後、「少しの間社員にしますのでターゲットを絞ったツアーを自分たちで考えて下さい」と言う。生徒はグループで考え、修学旅行時に実際に回って、感想や改善点などをプレゼンという形でまとめるのだという。なるほど、これなら面白そうだ。

えばノート指導。

ノートは後で振り返った時に要点や自分の課題を知るために取らせるもの。正しいノート作りのためにプロを呼び、外部講師として数時間技術指導をしてもらう。ノート作りの講義を教師も一緒に受けることで、同時に研修にもなる。そこで得たことを麹中メソッドとして授業に取り入れていく。

えば購買部。

校内に購買部を作り、生徒に事務用品などを売買させたり会計を任せたりしている。驚くのは普通なら管理を教員任せにするところを外部企業と提携して運営していることだ。実際、この活動はEYJAPANが全て監修している。

https://www.eyjapan.jp/about-us/corporate-responsibility/educational-support.html

麹町中学校ではこうした「社会で再現できるスキルを身に付ける授業」を多く行っているのだ。

 

第2部 その1 上井靖さんの実例紹介

上井靖さんは、名古屋市立八王子中学校の元校長で前川さんを呼んだことで有名になった例の方。現在は教職員研修や学習支援をする団体・民間の活動をサポートのためフリーランスとして起業している。

上井さんも学校の働き方改革を進める上で、まずは職員同士で話し合うことが大切だと仰っていた。改善点をあげる際は初めにネガティブなことを8分間出し、その後に具体的なアプローチを考えるという。

「いやあ、ホントもっと早く帰れないもんかねえ」

「生徒指導が重なると辛くってさあー」

こうした会話で場の空気が温まり、改善点も沢山見つかるのだという。

 

また、講義の中で自主的と主体的の違いの話が出てきた。

自主的は、やることが決まっているものを率先してやること

主体的は、やることが決まっていないものを自分で考え、判断して行動すること

教員は授業改善、働き方改革のために主体的に考えていかなければならないですね。

 

第2部 その2 中村浩二さんの実例紹介

中村浩二さんは東築地小学校の教頭であり、名古屋の働き方改革を牽引しているうちの一人だ。アンケートや出退勤記録を基に勤務校の実態を把握し、学校の働き方改革に望んでいる。

中村さんは学校の働き方改革を進める上で意識改革業務改善を行うことの必要性を挙げていた。

29年度は意識改革から行ったそうだ。

①定期的に「教頭便り」を出し、職員に働き方に関する啓発をする

 

②個人定時退校申告シートを予め提出し、朝の打ち合わせで「本日の定時退校者は〇〇先生です」と読み上げることで退勤しやすい雰囲気を作る

 

③カラー付箋でタスクを管理する

 

④集金業務を先生から手放す

 

⑤17時と18時にチャイムを鳴らすことで退勤を促す

 

⑥午後6時ごろから留守番電話にする

 

⑦働き方についての職員研修を行う

⑦働き方についての職員研修は特に大切だと思う。東築地小学校では、ポジティブアプローチによって自分たちの理想となる姿を想像し、それを業務改善に繋げている。

例えば「残業時間が40時間減って残業代も貰えたら何をしますか?」という質問を投げかけ、理想の1日のデザインを考える。それを職員間で見せ合うことで互いの生活スタイルの違いを知ったり、悩みを共有したりする。「じゃあその想いを実現するために業務の効率化をしよう」といって進めていくのだ。

ざっと挙げるだけでも素晴らしい取り組みの数々である。こんな管理職に出会えたら仕事に対するモチベーションも随分と変わるだろう。30年度の活動にも期待したい。

まとめ

3人の先生の話から学校の働き方改革のプロセスをまとめよう。

まず大前提として、改革はトップダウンで行う。管理職自ら職員の労働環境を改善するというスタンスを示し、時間を掛けて意識改革をする。

次に職員研修などでポジティブアプローチを用いて理想の状態を想像する。そして対話を通して目標を設定し、合意形成をする。その状態に近付くための改善策を学校全体で主体的に考える。

手段が目的化してしまったものは廃止する。

教師はファシリテーターとして授業をコントロールし、児童・生徒が自ら考えられるようにサポートする。個人ではなくチームでゴールを目指す。

働き方改革の効果を客観的な数字で示し、さらなる改善につなげる。

 

いかがだっただろうか。教員の働き方がおかしなことになっているのはシステムの欠陥である。個人の問題にすり替えるのではなく、学校全体の問題として捉え、根本から見直さなければいけない。

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