それ絶対モメるじゃん大辞典『か行』

ああ、やはりそうなるか。休校延長は懸命な判断だと思う。

僕が住む愛知県の教育委員会が、5月末まで休校を延長することを決定した。学校はまたもや変更を余儀なくされたけど、子どもや働く先生たちの命を最優先にした結果なので一安心だ。

 

しかし、そうなると気になるのは夏休みのこと。子どもたちに夏休みはあるのだろうか?

授業時間数を確保したい文科省は、あらゆる手を使って授業を行おうとする。履修した状態にしないといけないからね。

 

今考えうる案としては、

「夏休みを返上して授業を行う」

「7時間目を作る」

「新学習指導要領に則った課題を出す」

 

などがあげられるけど、どれも非現実的に見える。

まず夏休み。夏休みは暑いのだ。暑いから夏休みなのだ。クーラーが入ったからOK!と、大抵の人は思うだろうけど、公立校のクーラー事情はすごいぞ。設定温度が28度だったりする。下げても1時間に1回集中管理センターによって決まった温度に戻される。

7時間目も理屈としては可能だが、子どもはパンクするだろう。大人だって毎日そんなに勉強したくない。課題を出すにしても用意・回収・採点・成績転記(付けるのか?)など業務が果てしなく煩雑になる。小学校のオンライン授業も難しいだろう。

 

いや、そもそもそんなに履修させることが大切なのか。

全国的に起きている非常事態なわけだから特例として免除してもいいと思う。この辺りは多分様々な法律が絡んでいて難しいんだろう。(法律だけならいいけど)

先生たちは公務員だから、上からの指示には従わなくていけない。どんなに無茶でも、「ホントに今必要?」と頭にハテナが浮かんでも、決まったことは決まったように行う。それが教育公務員ってものだ。

 

世知辛い!世知辛いときは笑いだ。笑ってとりあえず忘れよう。

ってことで、それ絶対モメるじゃん大辞典『か行』いってみよう!

 

『か』 亀のエサは2時間目の休み時間にやるようにしましょう

昔、クラスの子どもがなんの前触れもなく亀を持ってきたことがあった。採れたから持ってきたそうだ。実にシンプルである。

カットパインが入っていたような大きさのプラ容器に少しの石と煮干しと共に入れられたそれは、ものすごい臭気を放っていた。あまりに突然の出来事に、僕は「あ〜そうか!持ってきたか!そうか〜!」と慌てふためいた。

しかし子どもたちは違った。容器にググッと顔を近づけ、甲羅の模様について話していた。どうやって、どこでとったのかを友達に身振り手振りで伝える。男も女も関係なく、ワイワイと生き物について語り合っていた。

一方、教室内でただ一人の大人である僕は(鼻ぁ!鼻の存在忘れとるんかあ〜!)と千鳥のノブの声で突っ込んでいた。(言うのはやめておいた)とにかく、生き物にはそれほどに子どもたちを惹きつけるパワーがあるのだ。

 

ここまで盛り上がってしまうと、大抵1学期間は飼うことになる。理科室から余っている水槽を持ってきて、うすく水を張る。そして、動物を飼うとセットでついてくる餌やりをどのようにさせるかが結構ポイントだったりする。

餌やりはみんながやりたい。それなのに「亀のエサは2時間目の休み時間にやるようにしましょう」と責任の所在を曖昧にした発言をすると、やりたい人が殺到し、あげた、あげてない、あげすぎ、独り占めなどが起き、モメる。

しかも自ら志願する子どもはいいが、あげたいけどみんなを押しのけてまで自己主張ができない子もたくさんいる。そうした子たちのためにも、エサやり当番は必須だと思う。

みんなで亀を大切にしたいね。

エサやり当番は3人程度の小グループを作って日にちを組み、みんなが経験できるようにしてあげよう

 

『き』 金色の折り紙あげる

「金」には人の心を魅了する魔力のようなものがある。

  • お金
  • 金の指輪
  • 金曜日…

大人はみんなこれらの言葉が大好きだ。聞くだけでニヤケが止まらなくなる。特に金曜日が嫌いだという人を僕は見たことがない。だって、金曜の仕事帰りの開放感ったらないもの。今日と明日と明後日に、もう労働をしなくていいだなんて。スキップしてこのまま無人島にでも行ってしまおうかしら。

僕がこうなったのは何も最近じゃない。ずっと前、そう、子どものときから「金」が好きで好きでたまらなかった。

だから、友達に「金色の折り紙あげる」なんて言われたら跳んで喜んだ。お道具箱の中でくしゃくしゃの状態で発見されるまで大切に保管していた。(ちゃんと使えた試しがない)

 

そんな経験から、子どもに「その金色の折り紙ちょうだい」と言われると断ることができない。ただ、一人だけを特別扱いすることもおかしいと感じる。はじめのうちは「みんなの分がないからあげられないんだ」と言っていたのに、寂しそうな顔を見ると申し訳なくて申し訳なくて。対応を変えてみることにした。

 

「よく聞いて。この金色の折り紙をあげようと思うけど、それを他の子が見たらどうかな?」

「欲しいって言うと思う」

「そうだね、取り合いになってモメるかもしれないよね」

「うん」

「だから真っ直ぐランドセルに行って、気づかれないようにしまうんだ。できるかい?」

「うん!!」

 

てく てく てく

てく てく てく

てく てく てく

 

『何その金色の紙ーー!!!』(子どもはすぐ見つけるよね)

 

金色の折り紙は、はじめから多めに用意してあげよう

 

『く』 クーラー壊れちゃった

子どもはアホほど汗をかく。10分の休み時間のうち9分30秒は走っているからである。ベッタベタで帰ってきて「クーラー壊れちゃった」などと聞かされた彼らの悲しみは、筆舌に尽くし難い。

クーラーよ、お願いだから壊れないで

 

『け』 計算機でやってもいいよ

算数指導法のスキルアップ講座。僕らはいつも通りの受け身の姿勢だったので、講師の先生の一言でピッと緊張が走った。

 

「今から、算数が苦手な子の気持ちを体験してもらいます。簡単な足し算の筆算をしますよ。用意始め」

「36+27」

「あ、言い忘れましたが、9進法で解いてくださいね」

 

9進法?って何だっけ。2進法は1と0のやつだったと思うけど、解き方がわからない。多分36をまずは9進法になおすんだよな、どうやって?周りの人たちは迷わずペンを走らせている。できないのは自分だけなのか。ああ、逃げたい。

「ほら早くやりなさい!どうしてできないの!」と言ってまわる先生がめちゃくちゃ怖かった。それからは、算数が苦手な子どもの気持ちはできる限り理解してあげたいと思うようになった。

 

数字のアルゴリズムがわからない子は、『2桁+2桁+2桁』のような筆算でつまづく。縦に足した数字が繰り上がると、何をどうしていいのか分からなくなる。そんな時は、縦に足す計算の補助として計算機を貸す。メモがわりにね。

これが不思議なことに、一歩間違うとモメ事に発展する。

周りの子に何も告げずに「計算機でやっていいよ」と一人の子だけに貸すと、「あの子だけずるい!」という声が必ず上がる。計算機を使って早く終わらせてやろうという心理が働くらしい。

 

貸す前に全員に聞いてみると反応は全く変わる。

「どうしてもできない場合は計算機に助けてもらってやればいいと思うよ。でも自分でできたらすごいよね。計算機使いたい人いる?」これだけで、なぜか子どもは「自分でやる!」と言う。

それでも困っている子にはこっそり声をかけて計算機を貸す。できたらうんと褒める。勉強が怖いなんて思わせたくないよね。

計算機を貸す場合は、クラスの子どもに一度聞いてからにしよう

 

『こ』 このクラスだけの秘密ね

学級王国という言葉があることからもわかるように、学校は閉ざされた空間の中で一人の教師がイニシアチブを取るシステムになっている。小学校では、1年間に渡ってほぼ全ての教科を教えることになるので、クラスの「色」が顕著に出る。

 

ギターが弾ける先生。

算数の専門家の先生。

DVDをたくさん持っている先生。

 

こうした特徴はどれも子どもの興味を刺激するし、教育的価値があると思う。でも、「仕事として」教育に応用することは結構ややこしくもある。ここからはバランスの問題だから、それぞれの価値観にもよるのだけれど。

例えば、柿ピーの柿とピーの割合が6:4の方がいい人もいるし、9:1でもいい人もいる。自分が楽しむだけならどれでもいいけど、仕事になると違ってくる。亀田製菓株式会社はお客様のアンケートなどをもとに7:3という黄金比をはじき出したそうだ。仕事と自分の特徴の線引きもこれくらいが良いのかもしれない。

 

教室はあくまで仕事場なので、子どもたちに全てを注ぎすぎて家のような感覚にならないようにしたい。そうなると「このクラスだけの秘密ね」と言って家庭科室でホットケーキパーティなどを開いてしまう。

子どもたちは他のクラスの子に何をしたのか聞かれたときに、キャッキャウフフ言いながら「秘密ーー!」と言う。そこからモメ事に発展したり、最悪、他のクラスの中で俺たちもやりたいと暴動が起きたりする。

自分の色を出すなら、仕事であることを踏まえる。学年全体への影響も考えて。

楽しいことは秘密にしないで、学年に広めていこう

 

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