【第8回:準備】みんな知ってる?物を捨てられない人の心理

STEP.1について解説します

  • STEP.1
    教材室を片付けてみる
  • STEP.2
    不用品置き場①を作る
  • STEP.3
    校長と話す
  • STEP.4
    プレゼン資料を作る
  • STEP.5
    衛生推進者になる
  • STEP. 6
    職員会議でプロジェクトを立ち上げる
  • STEP. 7
    キックオフ!

ゆとり先生くん

今回は、物を捨てられない人の心理について学んでいきます。
オーケー牧場

ベテラン校長さん

教材室に行きたいのですが、その前に校長先生、そこの机の上の鼻かんだティッシュ捨ててくださいよ。
恥ずかちい

その横の山積みのプリントもついでに捨てますよ。
やや!これはいつか見るからだめ。

じゃあ机の後ろのトロフィーは捨てましょう。ずっとそこにありますよ。
一昨年のボーリング大会で2位になったんだよ?簡単には捨てられないよ。

はい、ここまでにします。ちょっと今のやり取りを振り返ってみましょう。今のところ捨てられたものは校長の鼻水だけです。どうしてこうなったのか分かりますか?
いんや全く。

実は、こうなったのには理由があります。人の心理学校の環境の2つの側面から解説します。

人が物を捨てられない3つの理由(人の心理)

学校に限らず、物を捨てようと思って始めにぶつかる壁が「捨てない理由を考えてしまい捨てられない」というものです。

このことは心理学や行動経済学では、保有効果プロスペクト理論といった言葉で度々登場します。

保有効果とは、「自分が所有するものに高い価値を感じ、手放したくない」と感じる心理現象のことです。

 

例えば、リサイクルショップに行って自分の服を売る時、500円ですと言われればもっと高い値がつくはずだと思いますよね。実際には、物の価値は自分が手に入れた瞬間にほぼ0になると考えておいた方が良いです。

プロスペクト理論とは、「人は得をするよりも、損をしたくない思いの方が強い」という理論です。

 

例えば、1万円を手に入れた喜びよりも1万円を失った悲しみの方が大きいですよね。どちらも同じ1万円なのに期待値に差があります。このように人間は損失を回避したい生き物なのです。

この2つの心理を使ったものが、「初めの1ヶ月間は無料!」だとか「気に入らなかったら60日間返品可能!」といったうたい文句です。

1度所有した物を手放すのが難しく感じるのは人間として当たり前なのです。

参考:思考の整理は断捨離から! ものが捨てられない2つの理由と、その対策。

 

さらに、学校にはもう1つバイアスがかかっています。それが多元的無知(認知バイアス)です。

多元的無知とは、実際は嫌々行っていても、行動を見た人からすると「規範を受け入れている」と思われてしまうことによって、「嫌だ」とは言えない状態がさらに維持されてしまうことです。

 

例えば、「職員室が使いづらいなあ」と思っていたとします。文句を言わずに使っていると、周りの人からすれば「あの先生はこの環境を受け入れている」となります。他の先生も同様の思考に陥ってしまい、「使いづらいです」と言えなくなってしまいます。

 

このバイアスが働いている組織の特徴としては暗黙の了解が多く存在することです。ドキッとしませんでしたか?

多元的無知を説明する際は、しばしば裸の王様が引き合いに出されます。王様は服を着ていなかったにも関わらず、仕立て屋がお似合ですよと言ってしまいます。

観衆は王様の服が見えていないバカだと思われたくないので褒めます。他の人も続いて褒めます。こうしてだんだんと「王様は裸だ!」と言えない状況が出来上がるのです。

しかしこのお話には解決策も載っています。

観衆の1人の子どもが「王様、裸じゃん」と言ったことでバイアスが解けるのです。つまり思ったことを声に出せばいいんですね。

参考:「裸の王様」のメカニズムを実験で検証

学校が物を捨てられない3つの理由(学校の環境)

学校においてはシステムや時代背景も絡んで、捨てるのがより難しくなっています。

1つ目は、管理する物の量が多すぎるからです。

 

海外では施設管理者と教員の割合が50対50になっています。先生は学校施設に来て、教科のみを教え、終わったら帰ります。備品の購入や清掃、電話対応なども施設管理者の仕事です。

 

対して日本の学校は、施設管理者と教員が同じです。施設管理は校務分掌で振り分けられるため、先生は授業が終わった後に教材を注文したり、担当の分掌の提案物を作ったり、施設点検をしたりする必要が出てきます。

 

真面目にやっていては到底回らないシステムなのです。

2つ目は、管理する教員の入れ替わりが早いからです。

 

学校は、公立校では数年で教員が異動します。一般的には5年程で転勤するケースが多いようです。そのため、管理方法が定着しなかったり、うまく引き継ぎがされなかったりして忘れ去られる備品も多くあります。

 

また、最近では非正規採用の教員が増えています。非常勤や常勤講師の教員は1年や2年ほどで異動するケースが多く、引き継いで管理するのは不可能でしょう。

3つ目は、「所有することに価値がある」という文化が残っているからです。

 

高度経済成長期以降の日本人の消費行動は、いわゆる三種の神器や3Cをはじめとして、ブランド品や高級品など、「モノ」の所有価値に重きを置いていました。

 

「ローンを組んでマイホームを買い、マイカーや腕時計を買って家族で団欒することが幸せである」と幸せをブランディングし、消費を煽りました。

 

それは国の成長戦略の1つだったのですが、こと学校においてはフジツボのように文化として定着してしまいました。特に学校を動かしている今の管理職世代はこの文化にどっぷり使っているため、学校がなかなか変われない要因になってしまっています。

こうした背景を知っておくと捨てられない人を責めなくてすみますよね。人間なんだから捨てられなくて当たり前なのです。

もう一度考えてみよう

校長先生が捨てられない理由が分かりましたか。以上を踏まえてもう一度一緒に考えてみましょう。
そうだね。ちゃんと考えてみるよ。

ティッシュは汚いので捨てます。
汚いので捨てます。

プリントは多いので捨てます。
多いので捨てます。

トロフィーは2位なので捨てます。
え!これはダメでっしょ!2位だよ2位!

下から数えてですよね。ブービー校長。
ブービーなので捨てます!!泣

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